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2014年9月12日金曜日

私たちがやるべきこと/できること(その2)

 事務局長の野口です。
 前回の投稿では、私たち南アジア文化遺産センターができること/やるべきことについて触れました。今日は、あらためて前回の内容を図式化して整理してみたいと思います。

 まず初めに、私たちがすでに持っているもの/今すぐにでも機能するものは、現地とのつながり(下図1)です。言うまでもなく、この部分が私たちの活動のベースになるものです。

 私たちは、このつながりを通じて現地と情報を共有すると同時に、何が必要とされているのかを生の声として受け取ることができます(下図2)。それは...現地では入手が難しい機材等の調達・整備であったり、それらを使いこなせるようになるための訓練の機会であったり、最新の調査研究方法や分析技術などについての情報であったり、それらを得るための学術交流の機会であったりする訳です。これまでは、そうした要望について応えられる範囲で、個別・個人的に対応したりしてきたのですが、それではできることは限られてしまいます。そこでNPO法人を立ち上げて、より組織的に対応しようというのが、私たちの目的のひとつです。
 そうした需要は、個別の事情により多様です。そして、そのすべてについて私たちが対応できるかと言えば、そんなことはありません。個別の調査や小さなプロジェクトに関する案件であれば、私たち南アジア文化遺産センターが直接対応することができるでしょう(もちろん予算的な裏付けが必要なことは言うまでもありませんが...)。けれども、より規模の大きな―たとえばしっかりとした組織・体制の整備が必要な場合(下図3)などは、どうすれば良いのでしょうか?
 そのような時には、たとえば私たち南アジア文化遺産センターが窓口となって、さまざまな支援・助成制度にアプローチするといった手だてが考えられるでしょう。それがうまく行けば、現地において自主的に運営され、自立的にリーダシップを発揮できる組織・機関が整備され、地域さらに国レベルで文化遺産の調査や保護が円滑に行われるようになるでしょう(下図4)。

 それでは、なぜこのように一見すると回りくどい、と言うか時間がかかる取り組みが必要なのでしょうか? たとえば、国家レベルの支援により大規模な組織・期間を整備することからスタートすることはできないのでしょうか?
 もちろん、そうした取り組みがなされることがあれば、それは大変良いことだと思います。しかし、さまざまな社会的問題を抱えている南アジア諸国において、文化事業は必ずしも優先順位の高い案件にならないという事情があります。
 そしてもうひとつ、私たちが重視したいのは、現地において意欲のある人材がすでにいるのだということです。そこで私たち南アジア文化遺産センターでは、私たちが持っている現地とのつながりからスタートして、現地サイドの人的資源を有効活用する道すじを作ります。そして、そこからより規模の大きなプロジェクトが生まれた時には、しかるべき基盤を持つ他の組織・機関に支援をバトンタッチすることになるでしょう。
 これが、私たちが目指す、現地との協働による文化遺産の保護・活用への支援です。
 しかしながら、常にこのような手順を踏んで進めることができる案件ばかりではありません。前回も触れましたパキスタン北部におけるダム建設に伴う文化遺産水没問題などは、その代表例でしょう(ディアメル・バシャ・ダム水没文化遺産救援プロジェクトについてはこちら)。最新の公式アナウンスメントによるとダムの竣工は2024年、つまり残された時間はあと10年です。ここでは、2~3の過程(1についてはこの1年ほどの間に何とか確立できました)と並行して、現地調査を進める必要があります。今年8月に、現地において3ヵ年の基本調査計画を議論・策定したところですが、この9月から開始した予備調査の結果を逐次フィードバックして、調査計画を練り上げ、そこから必要な支援を整理し実施していくことになります。

 日本においても、1960年代以降の経済成長の時代の国土開発の進展に伴い、多くの遺跡が破壊される事態に直面しました。そのような中で文化財保護法が改正され、開発行為に際して遺跡が影響を受ける際には事前に調査を実施し、必要があれば開発計画を変更するなどの対応がとられるようになったのです。その後、全国各地に調査組織が作られ、日々、さまざまな案件に対応しています。
 しかしながら、南アジア諸国においてはそうした組織・体制は十分に整備されていません。その一方で、インドを筆頭に、かつての日本を上回る勢いで経済成長が進んでおり、多くの文化遺産が危機に瀕しているのです。
 私たちは、日本において培ってきた経験、ノウハウにもとづいて、南アジア諸国における文化遺産が直面する問題解決に手を差し伸べ、協力することができるはずです。
 これこそが、私たち南アジア文化遺産センターが目指しているものなのです。


※NPO法人の成立までの間は、設立準備事務局において入会希望の登録を受け付けております

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